部落差別のいま①【教育公務員による土地差別事件】
本記事では、実際に起こった差別事象から、今なお続く部落差別の現実について考えていきます。1回目は、2023年に起こった教育公務員による土地差別事件を取り上げます。
1.事件の概要
三重県内の公立学校に勤務する教員夫妻が、土地購入の契約後、その場所が被差別部落であるとして、2023年7月7日、取引した宅建業者に対し契約解除を文書(内容証明郵便)で要求。このことについて、三重県は、「差別解消条例」を初めて適用し、第三者委員会である差別解消調整委員会を設置しました。この委員会の答申を受け、2024年2月29日、知事は、この教員夫妻に対し差別をやめるように促す「説示」を行いました。
2.2024年2月29日付 知事による「説示」の概要
〇被差別部落の土地であることを理由に土地購入を避けたいと意思表示を行うこと、また、売買契約後に被差別部落の土地であることを理由に契約の取消し・解除を申し出ることは部落差別である。
〇条例第4条(基本理念)第6条(県民の責務)第9条(県の公務員の責務)及び教育基本法第9条にふれ、教育公務員に対する信用を傷つける行為である。
〇「部落差別解消推進法」施行後の重大な事案である。
〇県は、宅建業者に対し研修、啓発を実施し、宅建業者の意識の大幅な改善という成果が表れてきている中で、県の公務員により引き起こされたこの部落差別行為は、これまでの本県の取組を無化しかねない行為である。
〇被差別部落である旨を告知しなくても宅建業法第47条違反とはならず、むしろ顧客等への啓発の実施が求められている。申立人は宅建業者としての責務を忠実に果たしている。
〇部落差別は、その歴史的経緯や構造上、被害を受けた者が声を挙げづらいという性質をもつ。本件行為が、申立人のみならず、売主とその関係者にもたらした苦痛を理解し、自らの行為の不当性を十分認識するとともに、部落差別に関する正しい知識と認識を深め、今後二度と同様の行為を行うことのないよう説示する。
(参考記事)
部落解放同盟三重県連合会「県連だより(2025年2月25日発行)」より
≪続く≫